時を経て再読したら。

「トムは真夜中の庭で」のミュージカル(脚本・押川理佐さん)を観に行く予定なので、原作を読んでおきたかった。 私が子どもの頃に読んだのか、大人になってから読んだのか、正直言って記憶にない。 けれども断片的にストーリーを覚えているし、何より挿絵が印象に残っていて、懐かしいような、新鮮なような、不思議な感じがした。 そうした意味で、再読している私自身が、トムと遊んだ時代を夢に見る年老いたハティ、すなわちバーソロミュー夫人の立場と重なる。 最初に読んだときは、トムになって冒険した気分だったはずだけど……フィリパ・ピアスは、そんな読者の変化も見通していたのかもしれない。 この本の仕掛けに見事にハマったように感じる。 いずれにせよ、時を経て再読できてよかった。 つらい幼少期を過ごしたハティにとって、トムの存在は慰めだったろうし、彼女が大人になるにつれ、幸せになっていった物語に励まされる。 真夜中に象徴されるハティの人生にも、やがては朝が訪れるように、希望の光が注がれる時が来るのだ。 ちなみに、この作品に引用されている聖句(黙示録10章1節から6節)は、大天使ミカエルが世の終わりを宣言する箇所。 終末は近い!まもなくキリストが再臨される!大人たちよ、早く子どものような純粋な心を取り戻し、神に立ち返りなさい!……そんなメッセージを受け取るのは、私だけだろうか。 まだまだフィリパ・ピアスの仕掛けは続いている気がする。