中華モノ創作では必読級の一冊

【総評】 中華ファンタジー好きとしてはこの系統の中国服飾史本を待っていた! 中華モノの創作なら必読級の一冊! 他の中国服飾史本は、いずれも「だれが(身分や官職など)」「どのような場合に」「何を着る」といったTPOや、夏・冬の素材の違いの視点は極めて薄く、非常に不満だった。 だが本書は、官位を買った富豪の地方官僚夫妻の「お呼ばれ服」、つまり他家への訪問、宴席、葬儀、季節の儀式、正月の宮中儀式の服装(アクセサリーを含む)を、カラー図版を多用し、どのような衣裳があり、どのようなマナーで着用したかを詳述してある。さらには、これらの社交上儀礼、儀式のしきたりのフローチャートまである。 また、他の中国服飾史本では扱いが薄い、夏服・冬服の違い、普段着や下着、下着姿からの「着衣順序図」もある。そして一応、皇后の肖像画、宦官・錦衣衛(近衛部隊)の服装解説も簡単だがある。 明代地方官僚と、その妻の生活を衣裳から詳しく知ることができる極めて貴重な一冊。また、男性文人のファッションや考え方にも1章割いてある。 【残念な点】 ・本書は「地方官僚夫妻」を主としているので、以下の人々の服装を調べるのには向かない。記述がないか、あってもごく簡単なものにとどまっている。「明代の地方官僚夫妻」に絞っていたので、「一般庶民編」「宮中編」「芸能編」も出してほしい。また、本書の著者陸氏の他の中国服飾史本も邦訳できぬか? 妓女、踊り子、役者など芸能関係。 日雇い労働者、職人、屋台や行商などの小商人、飲食店関係、農民などの一般庶民(「庶民の商人の妻」の衣裳は詳しく書いてあったが、主人公家出入りの相当裕福な商人。本書の「庶民」は、「官位を持たない者、文人でない者」程度であり、「経済的非富裕層」ではない)。 皇帝(皇后や高官夫人の肖像画は数多いが、皇帝について解説したページが見当たらなかった)、皇族、後宮の妃、侍女、下女。 将軍や兵士の詳細な軍装(錦衣衛の服装は儀仗部隊や犯罪捜査の私服刑事の面が強い)、武術家。 僧侶・道士などの宗教関係。 モンゴル、チベット、ウイグル、ミャオなどの中国の少数民族。 ・衣裳の名称が分からないストレスはなかったが、線画付で衣裳の名称や官位に応じて着用する色やアクセサリーを「用語集」としてまとめてほしかった。また、より詳細な事項索引があればありがたかった。