東野圭吾『手紙』にも通底する殺人を犯した親族の負わされた、あまりに重い運命。本書の主人公「ある男」Xは、その重さから逃れるために戸籍ロンダリングに手を出す。Xは九州で林業に就職し、そこで出会った女性と結婚し、そして4年足らずで死亡してしまう。その女性の離婚調停にかつて関わった弁護士・城戸が狂言回しの役回りだ。罪を犯す者の生得的、環境的要因に立法、行政府は不作為で、その結果の犯罪に対してだけ司法が断罪するという国家運営の欺瞞が著者の主題だったのだろうと思った。気になっていた本書。文庫化されて読めて良かった。