「犯人は誰か?」ではなく、読者には犯人が分かっていて、どのように真相が明らかになっていくかというストーリー展開であるため、物語としての緊迫感はありません。 しかし、親子関係や家族のあり方を絡めながら、最後に意外な真実が明らかになるに至り、単なるミステリー作品ではないのだということに気付きます。 帯に書かれている「どこの家でも起こりうること」という一文が、結構深いんだな。 考えさせられました。 そして、さらに加賀刑事のエピソードが語られる。 読んでいる最中、容疑者の自分勝手な言動に苛立ちを感じているだけに、最後の最後が暖かい。 さすが、東野圭吾!
女刑事 音道貴子シリーズ。 この作品は短編集で、4作品が収録されています。 以前のレビューにも書いたことがありますが、このシリーズは長編作品と短編作品で趣が異なります。 長編が緊迫感を持ったサスペンス作品であるのに対して、短編は事件を絡めながらも、主人公の日常を描いた作品が多いようです。 本作の中でも、音道の恋人昴一や、かつてコンビを組んだことがある滝沢刑事、クセのある同僚たちとの関係の中で、時には刑事としての強さを、ある時は女性としての繊細さを、描いています。 緊迫感やスピード感が弱い分、サスペンス作品としての面白さには欠けるかもしれませんが、人間味のあるドラマとして楽しめる作品が並んでいます。 「木綿の部屋」では、滝沢刑事の違う一面が垣間見えたりするので、このシリーズのファンの人には、別の楽しみ方もできるかもしれません。
鬱で、過眠症で、引き籠りの主人公寧子。 その言動は、あまりに滅茶苦茶で、自分勝手で、まわりにいる人間にとって、迷惑極まりない。 あぁ、こんな人が近くにいたら嫌だなぁ・・・とも思うけれど、ストレートに自分の気持ちをぶつける主人公と、それを受け止めることができる津奈木の関係性がうらやましくも感じる。 そして、屋上のラストシーン。 過激なまでに自分を晒して、相手に分かってもらおうとする寧子は、ギリギリのところまで追い込まれているように思えるけれど、津奈木にはその本気度が伝わっていないように感じる。 読んでいて、イラっとするけれど、そんな津奈木の最後のセリフで、全てが集約される。 その切り替えの見事さは、やはり演劇的です。 読後感も悪くはありません。
ニセ占い師の会話トリックを逆手にとって、健全なコミュニケーションに活用するためのテクニックを紹介した本です。 読みやすく、1時間程度で読み終わってしまいます。 書かれていることは、いたってシンプルで、「ストックスピール」「UVS」「RHS」「スイッチバック」などと、テクニック名をつけてはいるもの、驚くようなテクニックではありません。 本文中に紹介されている実例も、少し都合が良すぎるように感じます。 ひとつのテクニックとして、意識して使ってみるのと、それを知らずに実践しているのとでは、効果に差が出てくることは確かでしょうが、散々テクニックを説明した後に、「テクニックではなく、スペシャルなひとりとして相手に接することが重要」という結論に結び付けるのは、いかがなものでしょうか? それを体験するためのテクニックということであれば、かえってテクニックが邪魔になるのではないかと思いました。
用心棒日月抄シリーズ第4作ですが、過去3作品とは趣を異にした作品です。 今回は、浪人することなく、正式な任務を負った16年振りの江戸出府であり、用心棒稼業に身を置くこともありません(細谷の助太刀はありますが・・・)。 また、過去3作品のように、斬り合いのシーンが詳細に描かれることもありません。 その点では、物語の緊迫感とスピード感は失われているように感じるのですが、その分、謎解きの面白さが作品の魅力となっています。 そして、シリーズ最終章として、かつての仲間達との再会と別れも描かれています。 このシリーズが終わりを迎えたことの、寂しさも感じますが、最後の終わり方には、清々しさも感じました。
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赤い指
「犯人は誰か?」ではなく、読者には犯人が分かっていて、どのように真相が明らかになっていくかというストーリー展開であるため、物語としての緊迫感はありません。 しかし、親子関係や家族のあり方を絡めながら、最後に意外な真実が明らかになるに至り、単なるミステリー作品ではないのだということに気付きます。 帯に書かれている「どこの家でも起こりうること」という一文が、結構深いんだな。 考えさせられました。 そして、さらに加賀刑事のエピソードが語られる。 読んでいる最中、容疑者の自分勝手な言動に苛立ちを感じているだけに、最後の最後が暖かい。 さすが、東野圭吾!
嗤う闇
女刑事 音道貴子シリーズ。 この作品は短編集で、4作品が収録されています。 以前のレビューにも書いたことがありますが、このシリーズは長編作品と短編作品で趣が異なります。 長編が緊迫感を持ったサスペンス作品であるのに対して、短編は事件を絡めながらも、主人公の日常を描いた作品が多いようです。 本作の中でも、音道の恋人昴一や、かつてコンビを組んだことがある滝沢刑事、クセのある同僚たちとの関係の中で、時には刑事としての強さを、ある時は女性としての繊細さを、描いています。 緊迫感やスピード感が弱い分、サスペンス作品としての面白さには欠けるかもしれませんが、人間味のあるドラマとして楽しめる作品が並んでいます。 「木綿の部屋」では、滝沢刑事の違う一面が垣間見えたりするので、このシリーズのファンの人には、別の楽しみ方もできるかもしれません。
生きてるだけで、愛。
鬱で、過眠症で、引き籠りの主人公寧子。 その言動は、あまりに滅茶苦茶で、自分勝手で、まわりにいる人間にとって、迷惑極まりない。 あぁ、こんな人が近くにいたら嫌だなぁ・・・とも思うけれど、ストレートに自分の気持ちをぶつける主人公と、それを受け止めることができる津奈木の関係性がうらやましくも感じる。 そして、屋上のラストシーン。 過激なまでに自分を晒して、相手に分かってもらおうとする寧子は、ギリギリのところまで追い込まれているように思えるけれど、津奈木にはその本気度が伝わっていないように感じる。 読んでいて、イラっとするけれど、そんな津奈木の最後のセリフで、全てが集約される。 その切り替えの見事さは、やはり演劇的です。 読後感も悪くはありません。
コールドリーディング
ニセ占い師の会話トリックを逆手にとって、健全なコミュニケーションに活用するためのテクニックを紹介した本です。 読みやすく、1時間程度で読み終わってしまいます。 書かれていることは、いたってシンプルで、「ストックスピール」「UVS」「RHS」「スイッチバック」などと、テクニック名をつけてはいるもの、驚くようなテクニックではありません。 本文中に紹介されている実例も、少し都合が良すぎるように感じます。 ひとつのテクニックとして、意識して使ってみるのと、それを知らずに実践しているのとでは、効果に差が出てくることは確かでしょうが、散々テクニックを説明した後に、「テクニックではなく、スペシャルなひとりとして相手に接することが重要」という結論に結び付けるのは、いかがなものでしょうか? それを体験するためのテクニックということであれば、かえってテクニックが邪魔になるのではないかと思いました。
凶刃改版
用心棒日月抄シリーズ第4作ですが、過去3作品とは趣を異にした作品です。 今回は、浪人することなく、正式な任務を負った16年振りの江戸出府であり、用心棒稼業に身を置くこともありません(細谷の助太刀はありますが・・・)。 また、過去3作品のように、斬り合いのシーンが詳細に描かれることもありません。 その点では、物語の緊迫感とスピード感は失われているように感じるのですが、その分、謎解きの面白さが作品の魅力となっています。 そして、シリーズ最終章として、かつての仲間達との再会と別れも描かれています。 このシリーズが終わりを迎えたことの、寂しさも感じますが、最後の終わり方には、清々しさも感じました。