夜間中学校というと、義務教育も満足に受けられなかった知識のない人たち、といった偏見がどこかにありました。しかし、この本に出てくる中学生は、学校教育を十分に受けられなくて教室での知識はなくても、素晴らしい人生経験の中に化学の基本を学んできた人たちでした。「蒸留」の言葉や原理は知らなくても、泡盛の工場で働いている、ものの燃焼は何なのか知らなくても、ろうそくで灯かりをともす生活をしてきている。炭酸水素ナトリウムの熱分解の仕組みは知らなくても、サータアンダギーをベーキングパウダーで膨らませて上手に揚げて作っている。まさに生活の中の化学を長年実践してきている大ベテランの人たちです。その経験を学問で裏打ちする、そんな授業でした。 最近の小中学生の中には「何のために理科を勉強するのかわからない」という子がいます。そうした子に迫られて絶句する若い理科の先生もいると聞きました。そう言った生徒や先生に、ぜひこの本を読んでもらいたい。理科は普段の生活の中にいくらでもある。それに気づくかどうか。気づけば理科の面白さにも大切さも認識できるだろう、ということがこの本を通じて思ったことです。
1~3巻をすでに持っているので、4巻を楽しみにしていました。博物館の研究者やバックヤードで働く人たちの姿が見られてためになります。展示物だけが博物館ではないことがわかってためになりました。
むかわ竜は今年の恐竜博の目玉として科学博物館に展示されるというので、大変楽しみにしています。全身のほとんどの骨格が見つかった日本の恐竜化石として貴重なものですが、この化石の発見に関しては多くの人がかかわり、価値を見出した研究者がいて、化石を大掛かりに発掘する行動に移した人がいて、細部までクリーニングを進めて母岩から化石を取り出した人がいて・・・と、多くの人がかかわって大発見につながったことがよくわかりました。漫画なので、小学生でもこの発見の内容をよく理解できると思います。恐竜を研究する人たちの熱意と研究の大切さを知る入口になるよい本だと思います。
日本人はどこから来たのかという謎について、わかりやすく書かれているのかと期待していましたが、思いのほか専門的な研究を書いた本でした。人類学に関する研究は平成の時代に大きく進み、ミトコンドリアDNAだけでなく、核DNAのハプログループによって分類され、先祖の由来が科学的に説明されています。しかし、古代人のDNAは劣化していることが多く、核DNAが分析できたのはまだごく一部だけとのこと。また、土の中から見つかったDNAは99%が細菌などほかの生物由来になるために、この研究は容易ではないと著者の研究者仲間から伺いました。実際、DNAで研究をするときには、研究者や発掘にあたる作業員などのDNAを事前に全て調べてから取り掛かるとのことに驚きました。そのため、日本人の祖先についての結論がまだ物足りなく思うのは、まだ研究途上だからと理解できます。特に、国境を越えた研究がすすめられないと、大陸から渡ってきた祖先についての決定打はありません。こうした課題は、個人だけで進められるものではないので、ここまでの研究をまとめてきた著者のご苦労がうかがわれます。 この本は「新版」とされていますが、「決定版」ではありません。あと数年たてば、さらに新しい知見が出てくると思われます。著者のさらなる研究を期待して☆4つとしました。
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めんそーれ!化学
夜間中学校というと、義務教育も満足に受けられなかった知識のない人たち、といった偏見がどこかにありました。しかし、この本に出てくる中学生は、学校教育を十分に受けられなくて教室での知識はなくても、素晴らしい人生経験の中に化学の基本を学んできた人たちでした。「蒸留」の言葉や原理は知らなくても、泡盛の工場で働いている、ものの燃焼は何なのか知らなくても、ろうそくで灯かりをともす生活をしてきている。炭酸水素ナトリウムの熱分解の仕組みは知らなくても、サータアンダギーをベーキングパウダーで膨らませて上手に揚げて作っている。まさに生活の中の化学を長年実践してきている大ベテランの人たちです。その経験を学問で裏打ちする、そんな授業でした。 最近の小中学生の中には「何のために理科を勉強するのかわからない」という子がいます。そうした子に迫られて絶句する若い理科の先生もいると聞きました。そう言った生徒や先生に、ぜひこの本を読んでもらいたい。理科は普段の生活の中にいくらでもある。それに気づくかどうか。気づけば理科の面白さにも大切さも認識できるだろう、ということがこの本を通じて思ったことです。
へんなものみっけ!(4)
1~3巻をすでに持っているので、4巻を楽しみにしていました。博物館の研究者やバックヤードで働く人たちの姿が見られてためになります。展示物だけが博物館ではないことがわかってためになりました。
漫画 むかわ竜発掘記
むかわ竜は今年の恐竜博の目玉として科学博物館に展示されるというので、大変楽しみにしています。全身のほとんどの骨格が見つかった日本の恐竜化石として貴重なものですが、この化石の発見に関しては多くの人がかかわり、価値を見出した研究者がいて、化石を大掛かりに発掘する行動に移した人がいて、細部までクリーニングを進めて母岩から化石を取り出した人がいて・・・と、多くの人がかかわって大発見につながったことがよくわかりました。漫画なので、小学生でもこの発見の内容をよく理解できると思います。恐竜を研究する人たちの熱意と研究の大切さを知る入口になるよい本だと思います。
新版 日本人になった祖先たち
日本人はどこから来たのかという謎について、わかりやすく書かれているのかと期待していましたが、思いのほか専門的な研究を書いた本でした。人類学に関する研究は平成の時代に大きく進み、ミトコンドリアDNAだけでなく、核DNAのハプログループによって分類され、先祖の由来が科学的に説明されています。しかし、古代人のDNAは劣化していることが多く、核DNAが分析できたのはまだごく一部だけとのこと。また、土の中から見つかったDNAは99%が細菌などほかの生物由来になるために、この研究は容易ではないと著者の研究者仲間から伺いました。実際、DNAで研究をするときには、研究者や発掘にあたる作業員などのDNAを事前に全て調べてから取り掛かるとのことに驚きました。そのため、日本人の祖先についての結論がまだ物足りなく思うのは、まだ研究途上だからと理解できます。特に、国境を越えた研究がすすめられないと、大陸から渡ってきた祖先についての決定打はありません。こうした課題は、個人だけで進められるものではないので、ここまでの研究をまとめてきた著者のご苦労がうかがわれます。 この本は「新版」とされていますが、「決定版」ではありません。あと数年たてば、さらに新しい知見が出てくると思われます。著者のさらなる研究を期待して☆4つとしました。