入門書でよくあるのは、キリスト教の状況を概観したり、宗派の解説とかをしたりですね。 こちらはそうした概観は一切なく、その代わり、旧約新約ひっくるめて「あらすじ」にフォーカスしています。 また、粗筋で幾つかパターンがある場合にはキチンと解説が入っています。例えばキリストの誕生を祝福するのは「ルカ伝」では羊飼い、「マタイ伝」では東方の三博士でした。このようなパターンについての交通整理もきちんとなされています。 ・・・ それと、要所要所に人間関係図や地図があり、これがよかった。 バビロン捕囚とかの粗筋も有名ですが、一体バビロンがどのあたりかってのもよくわかっていませんでした。小さな挿絵ですが地図が入っているとかなり違うと感じます。 アブラハム一族の家系図と対立関係とかもよくかけていて、筋を読みつつ、誰だっけこれ?となったら家系図に戻って位置づけを確認、とかできました。 ちなみに、旧約・新約ともそれを題材にした絵画もしばしば出てきました。ほとんどがローマのウフィツィ美術館やシスティーナ礼拝堂収蔵の絵画・壁画でした。ああ、イタリアに行ってみたい! ・・・ それから、これも面白かった。コラム。 例えば、ユダの位置づけについての話は興味深かった。ユダというのは一般には裏切り者でキリストをユダヤ教徒に売り渡したというイメージです。ところが実はユダというのはイエスに一番信頼されていた弟子であり、だからこそ裏切り役を仰せつかり、キリストの死によって「贖い」が完成するとかなんとか。つまり、「裏切り」はいわば「配役」であり、これなかりせば、キリスト教が完成しない。だからこそ一番信頼できる弟子にやらせた、と。 …まるでドラマみたいな話ですが、聖書の整合性や解釈にはかなりの広がりがあることが分かりました。 ・・・ ということで聖書のあらすじ本でした。 普通サイズの文庫本一冊にしっかり収まっており非常に良かったです。あと3回くらい読み返さないと覚えなさそうですが、聖書を概観するのには非常によいと思います。
本作『旧約聖書入門』なのですが、著者の三浦さんが日常の経験や彼女独自の視点も交えて旧約聖書の内容を語るものです。そこで出てくる聖人たちのひたむきな信仰や信仰に基礎づけられた高邁な行為、逆境にへこたれない姿勢には信者ならずとも心洗われる気持ちになります。ああ、こういう素敵な心持を持てるようになりたいなあ、と。 読後、ちょっとは寛容にそして誠実に周囲に対応できた気がします。するとあらまあ、なんだかどの方の反応もスムーズで皆優しい!?という感じを受けます。普段から舌打ちと悪態の常習者からすると、本書は一抹の清涼剤のような爽やかさをもたらしてくれました。 ・・・ 他方で、聖書や宗教に疑問点も出ます。十戒の解説部分があるのですが、まずは第六戒は『殺してはならない』です。いやいや、イスラエルもそうだし、旧約も聖典に数えるキリスト教徒の代表:米国は何ですの?紛争起こしてますよね?彼ら宗教的には異端ですか?と嚙みつけなくはありません(日本国憲法9条もそうですが、実態ではなく理想を条文化しただけだという解釈もできますが)。 まあ、本作は個別の学論を検討するものではないと解しました。 ・・・ 色々書きましたが、著者三浦さんの本書にあたってのスタンスがとても好きです。裏表紙にもこうあります。 “教典は経典である。そこにふくまれている宝石のような真理をみつけなければ、意味がない。だから、手引書は、どうしても必要なのだ”(まえがきより) つまり聖書は独りよがりに理解するのではダメで「読み方」もまた学ばなければならないのです。読書人にはこの言葉は非常に重いと思いませんか。これはあらゆるテクストにも言えることですが、自分の読み方が正しいという保証はどこにもないことに気づかされます。先人の読み方に沿うことで、独りよがりでない読み方・今まで見えていなかった内容が得られるかもしれないのです。…いままでどれだけ他人の見方なぞ気に留めてこなかったことかと。 そういう点も含め、いろいろ身につまされる気分になった読書でした。
書籍という体裁をとってはいるものの、性格診断キット、といった方がよいかと思います。 巻末の袋とじのコードをウエッブに入力し、30分強の診断テストを受けると、34カテゴリある資質のうち、被験者のもっと強い資質を5つ、抽出してくれます。 ・・・ 書籍では全34の資質について、その資質を持つ人の声、行動アイディア、当資質を持つ人との働き方をそれぞれ掲載しています。 ・・・ 読者はテスト後に自分の資質について書籍で該当する箇所だけ読むだけでよいと思います。 また、当該テストを団体で受けた場合、PMや上に立つ方は構成員の動かし方を知るうえでは参考になることでしょう。 ・・・ ついでに私の場合は以下の5つが該当しました。 1.内省 2.原点思考 3.個別化 4.学習欲 5.分析志向 これを読んだとき、感じたのは「感動」でしょうか。ここまで俺のこと分かってくれたんだ、みたいな。 まあこうして本ばっかり読んでいるので薄々理解はしていましたが、案の定といいますか。1, 2, 5はおおむね内向きの動きですし、4も基本的に一人でやること。つまり、人と何かやるってのはあまり得意ではないと我ながら再認識しました!ましてや偉くなりたい・人の上に立ちたいなんていう自己顕示欲は、自分の資質にそぐわないとよく分かりました笑 3.の個別化というのだけ自分でもへぇーと思った点で、「他人の感情を直観的に把握」「ひとりひとりが持つユニークな個性に興味を惹かれる」とありました。因みにおすすめの職はカウンセラー・アドバイザー・セールス等とありました。株屋の営業でかなりダメダメだった身としてはこの部分だけ少し??って感じ。 とはいえ5つの資質を通して読んでみて、改めて自分の強みを認識できたと思います。自分の現在の仕事と資質との親和性とか、今後強みをどのように磨くか等今後の判断材料にしたいと思います。 ・・・ ということで性格診断本でした。 第三者からの意見、ましてや多くのデータを基にした診断という意味では吟味に値する結果であると思います。もし皆さんが、自分の生き方や仕事にしっくり来ていないのならば受けてみる価値はあると思います。 ちなみに、Web診断後は2つほどレポートが見れるのですが、それ以外に色々追加でレポート・トレーニングをセールスしてくるのですが、個人的には不要かと思います。
先ずもって刺激的なタイトル。 帯には、”本書は、これから社会に旅立つ、あるいは旅立ったばかりの若者が、非常で残酷な日本社会を生き抜くための、「ゲリラ戦」のすすめである”とある。 ヤバい。完全に誤爆である。40代半ばの窓際のおっさんが手にしてしまった。 ・・・ しかしこの本は寧ろ、少し年のいった人の方がよく理解できると思う。誤解を招くかもしれない冷徹すぎる表現もある。その点で、人を選ぶ本だと言ってもいいかもしれない。 ・・・ 誤解を恐れずに言えば、この本は変化の勧めであり、脱コモディティ化・差別化への勧めである。 そのベースにあるのは新自由主義的な資本主義の極致であり、これを認めることである(筆者も主張するように決して資本主義がベストと言っているのではない)。結果、必然的に起こる人材のコモディティ化を想定している。例えばMBA、英語スピーカー、資格、どれも成り手が殺到した途端コモディティ化する。こうしたコモディティ化に負けないような独自性・Add-valueが必要になる。 ・・・ 私は筆者の意見にはおおむね賛成である。世の中はグローバル化しつつあり、競争相手は日本人だけではない。同じIT技術者ならば英語が喋れて人件費が安いインド人を雇うだろうし、同じ日本人でも残業(時にはサービス残業)を喜んでするような人の方が雇われやすいし昇進しやすいかもしれない。そのような厳しい社会の中で生きていくには、筆者が言うように徹底的に考え、変化に対応し、トレンドを読める人間になる以外に道はないのかもしれない。 ・・・ 他方で、私は思う。生き抜くことだけを考えて日々を送り、世の中の変化やトレンドを読むことに注力し、自分本位の考えや思いを失っていくならどうか。そんな人生は空虚ではなかろうか。もちろん社会は厳しいからそうでなくては生きていけないという反論はあるだろう。故に、やりたい事・好きな事・自分の志向も意識しつつ筆者の意見を取り入れていくのが良いのではないかと考えた。そうした個人の志向性を伸ばすとか育てる視点は本書にはないのは少し残念ではある。
な、なんなの、この作風は? 感想をぎゅっと絞ると、これです。 ・・・ 主人公は米国で救急外科医として勤務する奈津川四郎。彼のキャラ設定がもうアクがあり過ぎます。数日間ぶっ通しでメスを握り、神業的外科手術を夜通し成功させつつ、ふとした合間にセ〇レ看護師の下半身をまさぐる。 そんな彼の母親が頭を殴打され日本へ緊急帰国するのですが、出身の福井に帰ってもこの破格のキャラが大暴れ。かつての級友を連れまわす(もう連れ去りに近い?)、義理の姉とよろしくしけこむ、気に入らないやつには暴力を振るう、友人を使って公権力に入り込む等々違法行為スレスレのもうやりたい放題。 そしてこのような横暴が主人公目線の独白調で方言?も交えて、改行なく語られるのです。さらに合間合間に横文字の禁忌ワードの数々。その文体はドライブ感・疾風感が強く感じられ、嫌みな感じの一歩手前くらいで絶妙に抑えられているようにも見えます。というより、あまりに常軌を逸しているため、つい笑ってしまう、ギャグマンガ的なシュールさすら感じてしまいました。 ・・・ そんな物語ですが、実は犯罪予告を解くDetectiveものの展開であり、密室犯罪のトリックもあり、悲しい家系的暴力の因縁があり、それらを超克して最後はきれいに大団円を迎えるというものでありました。つまり一言でいうとぐいぐい読ませるし、面白い。 エンタメを標榜するメフィスト賞受賞は伊達ではありません。 登場人物の個々のキャラが強く、展開も早いので意識しづらかったのですが、物語のピークが分からず気づいたら終わってた、でもキレイに終わってた、という読後感です笑 ・・・ ということで初舞城作品でありました。 アクの強い作品で読者によって好き嫌いが分かれそうな気がする作品でした。私はそうでうすね、結構好きです笑 なんか他の人からえー?って言われそうですが。 でも娘や息子に読ませるかっていると・・・、そうですね、たぶん黙っていると思います笑。 ダメと言われると余計に読んでみたくなる人、そもそもヒールとか露悪的なものが好きな人には楽しむことが出来るエンタメ作品だと思います。話の分かる大人にはお勧めの作品。
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図解とあらすじでよくわかる「聖書」入門
入門書でよくあるのは、キリスト教の状況を概観したり、宗派の解説とかをしたりですね。 こちらはそうした概観は一切なく、その代わり、旧約新約ひっくるめて「あらすじ」にフォーカスしています。 また、粗筋で幾つかパターンがある場合にはキチンと解説が入っています。例えばキリストの誕生を祝福するのは「ルカ伝」では羊飼い、「マタイ伝」では東方の三博士でした。このようなパターンについての交通整理もきちんとなされています。 ・・・ それと、要所要所に人間関係図や地図があり、これがよかった。 バビロン捕囚とかの粗筋も有名ですが、一体バビロンがどのあたりかってのもよくわかっていませんでした。小さな挿絵ですが地図が入っているとかなり違うと感じます。 アブラハム一族の家系図と対立関係とかもよくかけていて、筋を読みつつ、誰だっけこれ?となったら家系図に戻って位置づけを確認、とかできました。 ちなみに、旧約・新約ともそれを題材にした絵画もしばしば出てきました。ほとんどがローマのウフィツィ美術館やシスティーナ礼拝堂収蔵の絵画・壁画でした。ああ、イタリアに行ってみたい! ・・・ それから、これも面白かった。コラム。 例えば、ユダの位置づけについての話は興味深かった。ユダというのは一般には裏切り者でキリストをユダヤ教徒に売り渡したというイメージです。ところが実はユダというのはイエスに一番信頼されていた弟子であり、だからこそ裏切り役を仰せつかり、キリストの死によって「贖い」が完成するとかなんとか。つまり、「裏切り」はいわば「配役」であり、これなかりせば、キリスト教が完成しない。だからこそ一番信頼できる弟子にやらせた、と。 …まるでドラマみたいな話ですが、聖書の整合性や解釈にはかなりの広がりがあることが分かりました。 ・・・ ということで聖書のあらすじ本でした。 普通サイズの文庫本一冊にしっかり収まっており非常に良かったです。あと3回くらい読み返さないと覚えなさそうですが、聖書を概観するのには非常によいと思います。
旧約聖書入門
本作『旧約聖書入門』なのですが、著者の三浦さんが日常の経験や彼女独自の視点も交えて旧約聖書の内容を語るものです。そこで出てくる聖人たちのひたむきな信仰や信仰に基礎づけられた高邁な行為、逆境にへこたれない姿勢には信者ならずとも心洗われる気持ちになります。ああ、こういう素敵な心持を持てるようになりたいなあ、と。 読後、ちょっとは寛容にそして誠実に周囲に対応できた気がします。するとあらまあ、なんだかどの方の反応もスムーズで皆優しい!?という感じを受けます。普段から舌打ちと悪態の常習者からすると、本書は一抹の清涼剤のような爽やかさをもたらしてくれました。 ・・・ 他方で、聖書や宗教に疑問点も出ます。十戒の解説部分があるのですが、まずは第六戒は『殺してはならない』です。いやいや、イスラエルもそうだし、旧約も聖典に数えるキリスト教徒の代表:米国は何ですの?紛争起こしてますよね?彼ら宗教的には異端ですか?と嚙みつけなくはありません(日本国憲法9条もそうですが、実態ではなく理想を条文化しただけだという解釈もできますが)。 まあ、本作は個別の学論を検討するものではないと解しました。 ・・・ 色々書きましたが、著者三浦さんの本書にあたってのスタンスがとても好きです。裏表紙にもこうあります。 “教典は経典である。そこにふくまれている宝石のような真理をみつけなければ、意味がない。だから、手引書は、どうしても必要なのだ”(まえがきより) つまり聖書は独りよがりに理解するのではダメで「読み方」もまた学ばなければならないのです。読書人にはこの言葉は非常に重いと思いませんか。これはあらゆるテクストにも言えることですが、自分の読み方が正しいという保証はどこにもないことに気づかされます。先人の読み方に沿うことで、独りよがりでない読み方・今まで見えていなかった内容が得られるかもしれないのです。…いままでどれだけ他人の見方なぞ気に留めてこなかったことかと。 そういう点も含め、いろいろ身につまされる気分になった読書でした。
さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 最新版
書籍という体裁をとってはいるものの、性格診断キット、といった方がよいかと思います。 巻末の袋とじのコードをウエッブに入力し、30分強の診断テストを受けると、34カテゴリある資質のうち、被験者のもっと強い資質を5つ、抽出してくれます。 ・・・ 書籍では全34の資質について、その資質を持つ人の声、行動アイディア、当資質を持つ人との働き方をそれぞれ掲載しています。 ・・・ 読者はテスト後に自分の資質について書籍で該当する箇所だけ読むだけでよいと思います。 また、当該テストを団体で受けた場合、PMや上に立つ方は構成員の動かし方を知るうえでは参考になることでしょう。 ・・・ ついでに私の場合は以下の5つが該当しました。 1.内省 2.原点思考 3.個別化 4.学習欲 5.分析志向 これを読んだとき、感じたのは「感動」でしょうか。ここまで俺のこと分かってくれたんだ、みたいな。 まあこうして本ばっかり読んでいるので薄々理解はしていましたが、案の定といいますか。1, 2, 5はおおむね内向きの動きですし、4も基本的に一人でやること。つまり、人と何かやるってのはあまり得意ではないと我ながら再認識しました!ましてや偉くなりたい・人の上に立ちたいなんていう自己顕示欲は、自分の資質にそぐわないとよく分かりました笑 3.の個別化というのだけ自分でもへぇーと思った点で、「他人の感情を直観的に把握」「ひとりひとりが持つユニークな個性に興味を惹かれる」とありました。因みにおすすめの職はカウンセラー・アドバイザー・セールス等とありました。株屋の営業でかなりダメダメだった身としてはこの部分だけ少し??って感じ。 とはいえ5つの資質を通して読んでみて、改めて自分の強みを認識できたと思います。自分の現在の仕事と資質との親和性とか、今後強みをどのように磨くか等今後の判断材料にしたいと思います。 ・・・ ということで性格診断本でした。 第三者からの意見、ましてや多くのデータを基にした診断という意味では吟味に値する結果であると思います。もし皆さんが、自分の生き方や仕事にしっくり来ていないのならば受けてみる価値はあると思います。 ちなみに、Web診断後は2つほどレポートが見れるのですが、それ以外に色々追加でレポート・トレーニングをセールスしてくるのですが、個人的には不要かと思います。
僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版
先ずもって刺激的なタイトル。 帯には、”本書は、これから社会に旅立つ、あるいは旅立ったばかりの若者が、非常で残酷な日本社会を生き抜くための、「ゲリラ戦」のすすめである”とある。 ヤバい。完全に誤爆である。40代半ばの窓際のおっさんが手にしてしまった。 ・・・ しかしこの本は寧ろ、少し年のいった人の方がよく理解できると思う。誤解を招くかもしれない冷徹すぎる表現もある。その点で、人を選ぶ本だと言ってもいいかもしれない。 ・・・ 誤解を恐れずに言えば、この本は変化の勧めであり、脱コモディティ化・差別化への勧めである。 そのベースにあるのは新自由主義的な資本主義の極致であり、これを認めることである(筆者も主張するように決して資本主義がベストと言っているのではない)。結果、必然的に起こる人材のコモディティ化を想定している。例えばMBA、英語スピーカー、資格、どれも成り手が殺到した途端コモディティ化する。こうしたコモディティ化に負けないような独自性・Add-valueが必要になる。 ・・・ 私は筆者の意見にはおおむね賛成である。世の中はグローバル化しつつあり、競争相手は日本人だけではない。同じIT技術者ならば英語が喋れて人件費が安いインド人を雇うだろうし、同じ日本人でも残業(時にはサービス残業)を喜んでするような人の方が雇われやすいし昇進しやすいかもしれない。そのような厳しい社会の中で生きていくには、筆者が言うように徹底的に考え、変化に対応し、トレンドを読める人間になる以外に道はないのかもしれない。 ・・・ 他方で、私は思う。生き抜くことだけを考えて日々を送り、世の中の変化やトレンドを読むことに注力し、自分本位の考えや思いを失っていくならどうか。そんな人生は空虚ではなかろうか。もちろん社会は厳しいからそうでなくては生きていけないという反論はあるだろう。故に、やりたい事・好きな事・自分の志向も意識しつつ筆者の意見を取り入れていくのが良いのではないかと考えた。そうした個人の志向性を伸ばすとか育てる視点は本書にはないのは少し残念ではある。
煙か土か食い物
な、なんなの、この作風は? 感想をぎゅっと絞ると、これです。 ・・・ 主人公は米国で救急外科医として勤務する奈津川四郎。彼のキャラ設定がもうアクがあり過ぎます。数日間ぶっ通しでメスを握り、神業的外科手術を夜通し成功させつつ、ふとした合間にセ〇レ看護師の下半身をまさぐる。 そんな彼の母親が頭を殴打され日本へ緊急帰国するのですが、出身の福井に帰ってもこの破格のキャラが大暴れ。かつての級友を連れまわす(もう連れ去りに近い?)、義理の姉とよろしくしけこむ、気に入らないやつには暴力を振るう、友人を使って公権力に入り込む等々違法行為スレスレのもうやりたい放題。 そしてこのような横暴が主人公目線の独白調で方言?も交えて、改行なく語られるのです。さらに合間合間に横文字の禁忌ワードの数々。その文体はドライブ感・疾風感が強く感じられ、嫌みな感じの一歩手前くらいで絶妙に抑えられているようにも見えます。というより、あまりに常軌を逸しているため、つい笑ってしまう、ギャグマンガ的なシュールさすら感じてしまいました。 ・・・ そんな物語ですが、実は犯罪予告を解くDetectiveものの展開であり、密室犯罪のトリックもあり、悲しい家系的暴力の因縁があり、それらを超克して最後はきれいに大団円を迎えるというものでありました。つまり一言でいうとぐいぐい読ませるし、面白い。 エンタメを標榜するメフィスト賞受賞は伊達ではありません。 登場人物の個々のキャラが強く、展開も早いので意識しづらかったのですが、物語のピークが分からず気づいたら終わってた、でもキレイに終わってた、という読後感です笑 ・・・ ということで初舞城作品でありました。 アクの強い作品で読者によって好き嫌いが分かれそうな気がする作品でした。私はそうでうすね、結構好きです笑 なんか他の人からえー?って言われそうですが。 でも娘や息子に読ませるかっていると・・・、そうですね、たぶん黙っていると思います笑。 ダメと言われると余計に読んでみたくなる人、そもそもヒールとか露悪的なものが好きな人には楽しむことが出来るエンタメ作品だと思います。話の分かる大人にはお勧めの作品。