トマトに感染したウイルスを巡るミステリー。 ウイルスの理屈は面白いし、農学初心者にも分かりやすいと思う。 日本列島で、徐々にウイルスが蔓延していく様を描いたものかと思ったが、物語としては二次元に近く、犯人探しに重きを置いた謎解き小説のようだった。 ただ、かなり単純な進行となっていて、物語性もないし、何を謎解きするのか(意外性もない)というこじんまりとした作品に収まっている。 謎解き後半部分は、仮想の物質に丸投げされた駆け足な決着だった。 こうなると、謎解きの過程を楽しむという要素もなく、物語の体も成しておらず、これが「このミス」大賞かと驚愕した。 全部が全部、過程がないとは言わない、前半は謎解き過程の描写はあったが。 それでも、人物描写、背景描写が不十分で 後半は、謎解きの体も成してないとなると、 評価されたのはシナリオなのだろうか。 メッセージ性はあるのかと思ったが、結末を読む限り、何がしたいのかよく分からない。メッセージがあるなら物語ではなく、社会への危機啓発本にした方が良いのでは? この出版社の「このミス」は、かなり信頼していたのだが。 物語が読みたくて買ったのだ。 物語が、どんどん単純化して合理化していくと、そのうちただのなぞなぞになりそうで 危機感を感じる。
《あらすじ》 若い女性の自殺が、新聞記事になった。一人。また一人と。3人目は自動車事故死。 3人目をひいたこの事故で、タクシーを運転していた男は守の養父である叔父。 一見、無関連に見える3人の死の関係性、そして様々な人間の過去と思惑が複雑に交錯する。 《個人的感想》 タイトル、そして冒頭の数ページで一気に引き込まれた。 登場人物のバックボーン、心情がリアルさを持って語られ、次第にそれが頭の中に、しっかりと世界観を確立して立ち上がってくる。 非現実世界を楽しむ。 これぞ読書の真骨頂だ。 ** 解説の北上さんが、元来私が思っていた事を、言葉にしてくれた。 「説明」では退屈なのだ。 宮部さんの場合、「描写」であり、次第にじわじわと、世界が正体を表してくるのだ。
《あらすじ》 様々な悩み、荒んだ感情を持つ人達と、その心を反映したかのような、乱雑な部屋。 見かねた親、あるいは子が、「片付け屋十萬里」へ指導を依頼。 偽善ではない、きっぱりとした十萬里の、部屋と心の片付け指南。 《個人的感想》 4編収録されているが、もう少しそれぞれが厚くてもいいな。 心に悩みがあると、部屋も散らかっていくだろうね。 誰でも直面しうる、身近な悩み、困難と、それぞれの部屋の症状が興味深かった。 帯にある通り、読後ほんとに片付けたくなる、掃除したくなった。 親の気持ちが様々描写されていて、自分は親を悲しませていないか、これから悲しませないか、気になった。 最後の短編は、普通の人には解決が難しいと感じたが、十萬里の感じの悪さ、淡々とした雰囲気の理由も明かされていて、これには非常に共感した。 だから、この人の悩み解決は言葉ではないのだ。 深い、人間の心情をテーマにした、しかし読後は爽やかで、ストレス解消にもなりそうな小説だと思った。
ファンタジー×ミステリーという珍しい小説ですが、まずファンタジー世界が、既存の物語の登場人物(アリスやチェシャ猫など)が出てくるというだけで、薄っぺら。 そして、ミステリーレベルも、ファンタジー(仮想現実のルール)という、ご都合主義に依存した、肩透かしなものだと感じた。 長所は、登場人物(獣もいる)同士の不毛な会話に、自他の区別や論理的思考が見え、この作者冴えてるなと思った所。そして、ファンタジー世界を理論的に説明している所。★3くらいつけても良いと思ったけど、 クライマックスの グログロ攻撃で急降下。 これ、何なんだろう。 どういう嗜好なんだろうか。 もう、この作者さんの作品を読むことはないでしょう。
主人公の周りにいる友人が魅力的で心地よい。 過酷な状況なのに、なかったことにはしたくない、戻りたくないっていうのは強く共感した。 理空也との所だけは、 詳細がないせいか リアリティが希薄で すっきりしない。 (家計簿に書いた疑問さえ明らかになってないし) 自身が相手を信用できない、と思った時点で終了だと思うけど、それが極論だとしても 相手のスマホ代払い続けるとか理解できないな。 作品全体に、そうした浅はかさがあって、完成度が低く感じられる。
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感染領域
トマトに感染したウイルスを巡るミステリー。 ウイルスの理屈は面白いし、農学初心者にも分かりやすいと思う。 日本列島で、徐々にウイルスが蔓延していく様を描いたものかと思ったが、物語としては二次元に近く、犯人探しに重きを置いた謎解き小説のようだった。 ただ、かなり単純な進行となっていて、物語性もないし、何を謎解きするのか(意外性もない)というこじんまりとした作品に収まっている。 謎解き後半部分は、仮想の物質に丸投げされた駆け足な決着だった。 こうなると、謎解きの過程を楽しむという要素もなく、物語の体も成しておらず、これが「このミス」大賞かと驚愕した。 全部が全部、過程がないとは言わない、前半は謎解き過程の描写はあったが。 それでも、人物描写、背景描写が不十分で 後半は、謎解きの体も成してないとなると、 評価されたのはシナリオなのだろうか。 メッセージ性はあるのかと思ったが、結末を読む限り、何がしたいのかよく分からない。メッセージがあるなら物語ではなく、社会への危機啓発本にした方が良いのでは? この出版社の「このミス」は、かなり信頼していたのだが。 物語が読みたくて買ったのだ。 物語が、どんどん単純化して合理化していくと、そのうちただのなぞなぞになりそうで 危機感を感じる。
魔術はささやく
《あらすじ》 若い女性の自殺が、新聞記事になった。一人。また一人と。3人目は自動車事故死。 3人目をひいたこの事故で、タクシーを運転していた男は守の養父である叔父。 一見、無関連に見える3人の死の関係性、そして様々な人間の過去と思惑が複雑に交錯する。 《個人的感想》 タイトル、そして冒頭の数ページで一気に引き込まれた。 登場人物のバックボーン、心情がリアルさを持って語られ、次第にそれが頭の中に、しっかりと世界観を確立して立ち上がってくる。 非現実世界を楽しむ。 これぞ読書の真骨頂だ。 ** 解説の北上さんが、元来私が思っていた事を、言葉にしてくれた。 「説明」では退屈なのだ。 宮部さんの場合、「描写」であり、次第にじわじわと、世界が正体を表してくるのだ。
あなたの人生、片づけます
《あらすじ》 様々な悩み、荒んだ感情を持つ人達と、その心を反映したかのような、乱雑な部屋。 見かねた親、あるいは子が、「片付け屋十萬里」へ指導を依頼。 偽善ではない、きっぱりとした十萬里の、部屋と心の片付け指南。 《個人的感想》 4編収録されているが、もう少しそれぞれが厚くてもいいな。 心に悩みがあると、部屋も散らかっていくだろうね。 誰でも直面しうる、身近な悩み、困難と、それぞれの部屋の症状が興味深かった。 帯にある通り、読後ほんとに片付けたくなる、掃除したくなった。 親の気持ちが様々描写されていて、自分は親を悲しませていないか、これから悲しませないか、気になった。 最後の短編は、普通の人には解決が難しいと感じたが、十萬里の感じの悪さ、淡々とした雰囲気の理由も明かされていて、これには非常に共感した。 だから、この人の悩み解決は言葉ではないのだ。 深い、人間の心情をテーマにした、しかし読後は爽やかで、ストレス解消にもなりそうな小説だと思った。
アリス殺し
ファンタジー×ミステリーという珍しい小説ですが、まずファンタジー世界が、既存の物語の登場人物(アリスやチェシャ猫など)が出てくるというだけで、薄っぺら。 そして、ミステリーレベルも、ファンタジー(仮想現実のルール)という、ご都合主義に依存した、肩透かしなものだと感じた。 長所は、登場人物(獣もいる)同士の不毛な会話に、自他の区別や論理的思考が見え、この作者冴えてるなと思った所。そして、ファンタジー世界を理論的に説明している所。★3くらいつけても良いと思ったけど、 クライマックスの グログロ攻撃で急降下。 これ、何なんだろう。 どういう嗜好なんだろうか。 もう、この作者さんの作品を読むことはないでしょう。
派遣社員あすみの家計簿
主人公の周りにいる友人が魅力的で心地よい。 過酷な状況なのに、なかったことにはしたくない、戻りたくないっていうのは強く共感した。 理空也との所だけは、 詳細がないせいか リアリティが希薄で すっきりしない。 (家計簿に書いた疑問さえ明らかになってないし) 自身が相手を信用できない、と思った時点で終了だと思うけど、それが極論だとしても 相手のスマホ代払い続けるとか理解できないな。 作品全体に、そうした浅はかさがあって、完成度が低く感じられる。